中国003型空母に関する纏め

2020/04/30作成

2020/05/09掲載

著:干缶(@thoshino23kank2)

一寸だけ校正:桐ケ谷 颯明

※筆者干缶氏曰く「各データの数値は公表されていない物も多いので多分に推測が混じっている」とのことなので、数字に目くじらを立てるのはやめて下さい。あくまで003型についての個人の意見です。


 月刊紙「軍事研究」の本年3月号に

〈電磁カタパルト採用説は真実か!規模・能力縮小か?中国空母「002型」〉

と題した、田中三郎氏による中国海軍が現在建造中の新型空母の内容を予想した

論稿が掲載されていました。

今回はその論稿について、前提知識も含めて簡単にまとめました。

画像等は、分かりやすいモノを勝手にネットから持ってきた拾い物ですがお許し下さい。

 

 まず、中国海軍の空母について簡単に。各種性能数値は推測も多いので注意して下さい。

現在の中国海軍では2012年に就役した空母「遼寧」と、ついこの間の2019年末に就役した空母「山東」の2隻が就役し任務についています。「遼寧」は001型航空母艦とも言われ、中国海軍初の航空母艦です。

 

元はソビエト海軍の下でアドミラル・クズネツォフ級航空母艦「ヴァリャーグ」として建造されていました。 しかし、ソ連崩壊により建造は中断され、ロシア側との協議を経て造船所があったウクライナに帰属が確定し、各種艤装を取り外してスクラップとして売られていたところを、中国海軍の退役軍人が社長を務めるペーパーカンパニーが「洋上カジノを作る」という名目で購入し2002年に中国に回航されました。

 

その後、各種艤装を行い2012年に遼寧省の大連港で 中国初の空母「遼寧」として就役し、現在に至っています。 遼寧は、中国海軍初の空母であり、中国海軍が空母運用のノウハウを得るための練習空母としての重要な役割を担っていました。

現在では、中国海軍の空母運用に必要な“最低限”のノウハウはほぼほぼ完成してきていると見られています(これは証拠不明の曖昧な話ですが)。

 

〈※空母の運用には、動く空母と艦載機だけが有ればいいのではなく、高い技術を持った運用要員が必要です。例えば、艦載機を狭くて危険な艦上で運用するために必要なデッキクルー(LSO・AHO・カタパルトオフィサー等)や、揺れながら動く空母から離着艦する(コレが相当難しい)技術を持つ艦載機パイロットなどが必要です。これらノウハウの獲得には長期にわたる空母の運用経験が求められ、中国海軍もこのノウハウ獲得に向けて約7年間、遼寧で訓練を行なってきました。当然、米国には及びませんが…。〉

写真上:空母遼寧/下:空母山東

 

 練習空母として重要な役割を果たしてきた遼寧ですが、純粋に“航空母艦”という移動航空戦力として考えた場合、その能力は米国のそれなどに比べて、限定的と言わざるを得ません。

例として、遼寧の仮想的である米海軍の主力原子力空母であるニミッツ級と比較します。

下の画像では構造的な違いがよく分かりますが、遼寧にはいくつか欠点があります。

上の画像を見ながら読んで頂くと分かるように、ニミッツ級と遼寧を比べた場合、全長自体は大した差はありません。しかし、排水量(要は体重を表す数値みたいなモノ)がミニッツ級は10万トン弱であるのに対し、遼寧のそれは6万トン強でしかありません(いずも等と比べれば断然デカいですが…)。

 

排水量は格納庫の大きさ、つまり艦載機の搭載数に直結します。ニミッツ級の場合、戦闘攻撃機であるF/A-18を約40機にプラスして各種支援機を約30機、計70機もの艦載機を搭載出来ます。しかし、遼寧の場合、主要艦載戦闘機であるJ-15は24機程度しか搭載できず、各種支援機も10〜20機程度、合わせても36機程度であると推測されています。艦載機の数=戦力値であるため、遼寧はニミッツ級にはだいぶ不利を強いられてしまいます。

 

さらに、ニミッツ級はフラット式甲板と蒸気カタパルト方式を採用しているのに対し、遼寧はスキージャンプ方式を採用しています。カタパルト方式の場合、発艦する艦載機を、蒸気を利用したカタパルトの強力な力で強引に、瞬時に発艦可能な速度まで加速させて射出するので、艦載機の発艦重量はあまり問題となりません(そのかわり、強力な加速に耐えられる強固な機体構造が必要になりますが…)。そのため、戦闘機よりも大型で重量のある、固定翼早期警戒機や中型輸送機も運用できます。

 

また、艦載機の発艦重量の制限がだいぶ緩くなるので、艦載機が発艦する時、兵装や燃料を満タンにしたフル装備でも発艦することが出来ます(まあ場合によりけりですが…)。それ故、艦載機の能力をフルに発揮できます。

↑蒸気カタパルトの概要

一方で、遼寧のスキージャンプ方式の場合、蒸気カタパルトの様な高度な技術と複雑な仕組みは必要なく、艦載機自身の加速で発艦速度に達するために、甲板を斜め上にカーブさせるスキージャンプ台で、発艦速度を稼いでいます。

 

しかし、艦載機が重過ぎると、発艦速度を稼げないため、発艦可能な最大重量がかなり制限されてしまいます。J-15は最大離陸重量こそ33トンですが(F/A-18Eは30トン)、遼寧から発艦する際はもっと重量が制限されると思われます(28トン?)。そのため、発艦する艦載戦闘機に満足な兵装量や燃料を搭載できず、艦載戦闘機の攻撃力や航続距離はかなり制限されてしまいます。

故に、スキージャンプ方式の遼寧は、艦載戦闘機の能力をフルに発揮できないという大きな欠点があります。

 

また、ニミッツ級の場合、4つのカタパルトに4機発進準備態勢を取った艦載機が順次カタパルトによって発艦する事で、20秒に1回、艦載機を発艦させることが可能です。

 

一方、スキージャンプ方式の遼寧の場合、甲板後部から助走をつけて飛ぶので、甲板で発進準備態勢を取れるのは1機のみで、発進間隔がかなり長くなってしまいます。

このように、遼寧のスキージャンプ方式の発艦は、ニミッツ級のカタパルト方式と比べて、様々な点で不利なものになっています。

 

因みに、ロシア海軍などもスキージャンプ方式を主に採用していますが、これは特殊な事情故の物であり製造できなかった訳ではありません。

 

(管理人注:干缶氏がTwitterで原文に受けたご指摘に曰く、ロシアもといソ連は蒸気カタパルトの製造技術が無かったわけではなく、ソ連時代に既に完成していたとのこと。

建造時の国防相が大層なSTOVL好きであった為に非採用と相成った次第であるらしい。

退陣後のウリヤノフスク級では採用されている様だ。)

 

蒸気カタパルトの開発・製造には高度な技術や経験が必要で、現在では製造から装備までしているのは米国のみとなっています(英国は技術はあるが現在は運用廃止・フランスは英米から輸入して運用)。

 

↑スキージャンプ方式の発艦の様子。写真はシーハリアー。

スキージャンプ台からジャンプするように発艦する様を指してスキージャンプ方式といいます。

 

航空母艦の能力発揮には、多くの支援機体の存在が必要です。

特に、ヘリコプターと早期警戒機(AEW)の存在は不可欠です。空母におけるヘリコプターは、対潜戦闘・洋上での軽補給・墜落した味方機の搭乗員を救助する等の任務用に、哨戒ヘリ等が運用されています。米海軍のニミッツ級ではSH-60FとHH-60がその任についています。遼寧では、Ka-28哨戒ヘリコプターが同じ役割を担っています。

 

しかし、遼寧の場合、上記の発進方式の欠点より、ヘリコプターの運用能力は問題ないのですが、大型の固定翼早期警戒機(AEW)を運用できないという欠点があります。例えば、ニミッツ級はAEWとしてE-2C/Dホークアイを運用しています。しかし、遼寧にはそれに該当する機体は、かなり能力の限定される早期警戒ヘリコプターであるKa-31(ロシアから輸入)です。

 

そもそも早期警戒機は、空母艦隊から少し離れた上空でレーダーにより敵航空機を探知し、艦隊の艦艇のレーダーより早期に敵を発見して情報を伝える役目を持っています。早期警戒機は、空母の安全性、目標捜索能力、遠距離作戦能力を大幅に高めることができます。

 

↑早期警戒機 E-2C/Dの運用イメージ

画像上:E-2D/下:Ka-31

Ka-31は早期警戒ヘリコプターですが、早期警戒機に比べると小型で能力も劣ります。

具体的には、レーダーの探知距離(条件が色々とあるので大体推測ですが)はE-2Dの約650キロに対してKa-31は約250キロしかありません。

また、最大哨戒時間は前者の約6時間に比べ後者は約2.5時間しかありません。また、後者は上昇可能な高度も低く、総合的に見て、艦隊の周辺空域を警戒できる範囲・時間がかなり劣っているのが現状です。

 

現在中国海軍は、この様な現状を改善すべく、将来的にカタパルトを装備した空母への搭載を前提として固定翼装軌警戒機の開発を進めています。KJ-600という名称で、能力的にはE-2Dに相当すると予測されています(外見もそっくりという話も…まさかね…)。

 

また、遼寧の主機は性能が低く、速度がかなり遅いという話もあります(真偽不明ですが)。まあ、そもそも根本的にニミッツ級の主機は原子力機関であり、艦自体の出力や航続距離などで通常動力空母である遼寧は大きく劣っているというのもありますが。

 

このように、遼寧は、仮想的たる米海軍のニミッツ級と比べ、艦のサイズや発艦方式の違いなどによる欠点が多くあり、遼寧は実戦的空母ではなく練習空母だとされていて、事実そのような運用がなされていると推測されてきました。

 

そして、ついこないだの2019年12月7日、中国初の国産空母である「山東」が就役しました。山東は遼寧をベースに中国独自の技術を詰め込んだ発展型といった空母であり、根本的な構造の変換こそないものの、各種装備を進化させ総合的な空母としての能力を向上させています。当初は遼寧をベースにしているため「001A型」と言われていましたが、就役時に「002型」として公表されたため、現在では002型空母山東となっています。

 

画像を見て貰えば分かるように、山東は遼寧と比べて外見に大きな変化はありません。

しかし、艦橋が大型化されて指揮統制能力が向上したり、各種電子装備品の性能も向上していると見られます。

また、遼寧の元となったヴァリャーグは大型対艦ミサイル発射機とその弾薬庫(コレが結構場所を取る)を装備するなど純粋な航空母艦としての設計がなされていませんでしたが、山東では純粋な空母として設計されています。

 

そのため、格納庫が拡大されており、排水量自体は遼寧の約6万トンから少し減って5万トンになっていると見られますが、艦載戦闘機数約24機に対し30機程度に増えていると見られています。また、各種支援機の搭載数も増えていると推測されています。

ただし、発艦方式は依然としてスキージャンプ方式であり、固定翼早期警戒機の運用能力はないと見られていて、遼寧の習作であり、練習空母という役割も変わらないようです。

 

さて、長々と前提知識を話しましたが、ここからが本題の003型空母のついてです。まだまだ情報は少なく、予測がかなりの部分を占めますが、田中三郎氏が分かりやすく解説した論稿がありますので、まとめようと思います。因みに該当の軍事研究誌上では「002型空母」とされていますが本文では「003型空母」と呼ぶことにします。

 

 

 

〈「KDR」が推定する003型空母〉

「漢和防務評論(KDR)」の2014年11月号によると、信頼すべき上海の造船工業会消息筋がKDRに明かしたところでは、中国2隻目の国産空母である「003型」は通常動力空母であり、中国初の蒸気式カタパルトを搭載する、遼寧や山東とは根本的に異なるより大型の設計の空母になるとしています。

 

「KDR」は、以前ウクライナが経済的に極めて困難な時期に、中国が旧ソ連空母「ウリヤノフスク」の原子力動力技術を取得すべく意図していたと報じたこともあります。しかし、消息筋が明かしたところでは、国産2隻目の空母は通常動力空母であるといいます。中国海軍の精神は「一歩一歩着実に」戦略です。そのことからも、一気に原子力空母へ駒を進めるのではなく、まずカタパルト方式の空母を経てから原子力空母の建造へと駒を進めると考えられます。

 

通常動力を採用する以上は、電磁カタパルトを採用することは出来ません。電磁カタパルトは膨大なエネルギーを必要とするからです。このことから、採用できるのは蒸気式カタパルトのみであると考えられます。

中国は蒸気カタパルト技術について、旧ソ連の崩壊前、ニトカ(NITOKA)で「ウリヤノフスク」用に設計され試験中だった蒸気カタパルト技術と、ブラジル海軍が2000年にフランス海軍から取得し運用されていた空母「サン・パウロ」から多くの技術を取得済みと見られ、その運用には問題がないと見られています。

 

↑ブラジル海軍の空母「サン・パウロ」カタパルトが装備されていることが分かる。

現在は運用中止され後継には英海軍「オーシャン」が決定している。

 

一方、モスクワに拠点を置くウェブサイト「MilitaryParade」は、003型のサイズが基準排水量6万1351トンの米国の「キティホーク」と類似し、山東より5%大きいと2014年2月28日付で報じています。

 

 

〈フラット式傾斜角大型甲板とカタパルト方式の採用〉

中国が建造中の003型空母は遼寧や山東を大幅に上回る、正真正銘の中国国産空母です。

まず、003型の動力装置はかなりの改良が見られています。この動力装置は中国が自主開発した大型ガスタービンで、今後の003型の強力な動力となり得るものです。これによって、空母自身の排水量と有効搭載量を大幅に増やすことができ、搭載機数も増やすことが出来ます。

 

さらに、遼寧や山東で採用されていたスキージャンプ方式をやめ、フラット式甲板とカタパルト方式を採用したことです。これによって前置きで上述したように、飛行機の発艦間隔の大幅な短縮や、固定翼の早期警戒機を運用することが出来るようになり、作戦効率を高めることが出来ます。この他にも、武器装備システム面でも一部改良が見られます。

 

スキージャンプ方式は、武器燃料の搭載量が制限される他に、搭載機も今のところ防空任務に特化せざるを得ないことが背景にあると見られます。中国がJ-31戦闘機を開発する背景には、フラット甲板用艦載機の開発に関係している可能性があります。J-15主任設計技師の孫聡は、さらに次世代艦載機が2020年以前には出現するとの情報を明らかにしました。

孫聡はその詳細を明らかにしませんでしたが、これは明らかにカタパルト発射用に開発されたJ-31ステルス戦闘機のことでしょう。カタパルト発射用戦闘機の開発情報は、二隻目の国産空母がカタパルト方式を採用するとの情報と軌を一にするものであると言えます。

 

 

〈中国網が報じた中国の電磁カタパルト〉

「中国網日本語版(チャイナネット)」(2015年10月22日)によれば、中国は電磁式カタパルトを空母に装備する方向であるといいます。そうなれば、空母はより多くの艦載機を搭載出来るようになります。

 

当時の劉華清海軍司令は1980年代、軍委員会内で決定した海軍戦略計画の中で、2020年までに国産空母を建造するという方針を掲げ、第二列島線内の制海権を掌握するとしていました。軍事専門家によると、中国の首脳部はこの計画を引き継いでいます。空母の建造数は明らかにされていませんが、遼寧省の高官は2014年1月、「中国は将来的に4隻の空母を保有する」と述べていました。

 

米国の某サイトで公開された衛星写真により、中国がガイドレールを装着した電磁式高速牽引装置の試験機テスト設備を建造していることが明らかになりました。当該設備は米国に次ぐ二番目の電磁式カタパルト地上模擬実験設備となります。

電磁式カタパルトは空母艦載機のための離陸加速器であり、既に米海軍の「ジェラルド.R.フォード」級空母に採用されています。従来の蒸気式カタパルトに比べ、電磁式はコンパクトで、複雑な付属システムを必要とせず、効率性が高く、寿命も長くなっています。

 

さらにはメンテナンスが簡単でコストも抑えられるなどのメリットがあり、今後の空母のコア技術の一つとなります。

電磁式カタパルトを開発している国は現在、中国、米国、イギリス、ロシアだけであり、原寸大の地上模擬実験設備の建造に成功したのは中国と米国だけです。衛星写真から推測すると、実験設備は全長約120〜150mで、レールの長さは約80m。

 

ここまで大規模な実験設備を建造できるということは、中国が大型の直流リニアモーターと先進的な強制蓄電装置、高性能な発電機などといった電磁式カタパルトのコア技術を既に把握し、全面的な検証を成功させたことを意味しています。また、電磁式カタパルトは電磁技術、先進的な電機エンジニアリングと発電技術など多数の分野にわたっています。当該技術のブレイクスルーは、中国が艦船電気工学の分野で全面的な進歩を遂げたことも意味しています。

 

 

〈003型空母は米国のキティホーク級空母に類似か〉

2020年末までに組立が完了すると見られる003型空母は、伝えられるところでは、米国のキティホーク級空母(米海軍で最後の通常動力推進空母)に類似しているといわれています。

満載排水量は八万トンに達し、七万トン強の空母「遼寧」に比し一万トン近く大きく、全部フラット甲板を採用し、蒸気カタパルト四基を設置しています。中国が近年取得した最新科学技術の成果、それによる思いもよらぬ電子及び武器装備品がこの空母上に装備化されれば、その戦力は非凡なものになるかも知れません。

 

↑空母キティホーク

 

 

〈西側研究所等の評価〉

ロンドンに本拠を置く英国際戦略研究所(IISS)は二〇一九年、中国の軍事造船所がより大きな水上軍艦に焦点を当てていると指摘し、「中国海軍の開発が新たな局面に入る」かもしれないとの推測を加えました。

中国海軍は最近、四隻の大型055型巡洋艦と初の075型ヘリ大型空母を進水させました。中国軍は三番目の空母である003型空母計画を正式には発表していませんが、国営メディアは建設中だと伝えています。

画像上:055型駆逐艦。中国軍は駆逐艦としているが、

米軍などではその大きさ(排水量一万三千トン)から巡洋艦としている。

下:075型強襲揚陸艦の想像CG

 

米国防総省は、2019年5月に発表された中国の軍事近代化に関する年次報告書で、第3の空母の作業が始まった、と述べています。

西側武官や安全保障の専門家は、

 

「遼寧・山東は2030年までに最大六隻の空母の訓練艦になると予想される。空母の建造と配備は非常に難しい。駆逐艦、潜水艦、航空機で、重要な空母をどのように防御するかが、今後の問題の核心だ」と述べています。中国海軍は今、その計画についてあまり詳しくは言及していません。しかし、中国海軍の建設状況から、その野心は広大であることは分かります。

 

 

〈003型空母の搭載機は何か〉

既存の二隻の空母(遼寧・山東)とは異なり、カタパルトを装備した空母で運用するための搭載機について中国海軍は、実戦配備が始まったばかりのステルス戦闘機J-20採用するのか、J-20に比べて小型のステルス戦闘機J-31を採用するのか決めかねているといわれています。

 

これは、中国の軍事情報筋がJ-20もJ-31も長所と短所があり、どちらを採用するのか決まっていないと話したという情報と一致しています。

空母で運用する際、J-20にとって不利なのはその機体の大きさです。

 

↑各種第5世代戦闘機の大きさ比較。J20はJ31に比べてだいぶ大きいことが分かる。

 

J-31(殲31)は、中国藩陽飛機工業集団が開発中の第五世代双発ステルス戦闘機です。本機は、2011年1月に初飛行を行ったJ-20に続いて存在が確認された中国で二番目のステルス戦闘機で、J-20が全長20m超の大型機であるのに対し、全長17m程度の中型の双発戦闘機となっています。

 

2012年に試験中の映像が流出し存在が確認された後も、本機についての情報は公式にはほとんど明らかにされていません。J-15戦闘機の主任設計技師の孫聡は、次期艦載機(J-31)の出現は2020年前後と指摘しています。

J-31は、機体のサイズ的には空母での運用に向いていますが、機体構造がカタパルトの射出に耐えられるほど頑丈ではなく、カタパルト装備の空母で運用する場合、機体構造の強化が必要になるだろうといわれています。ですが、J-31は実用化には至っておらず、未だに開発中の機体です。

 

J-20(殲20)は全長20.3mで、現在、空母「遼寧」で運用中のJ-15(Su-27のコピーで全長22m)よりは小さいですが、全長17mのJ-31に比べれば3m、米海軍のF/ A-BE /Fと比べても2mほど大きく、機体重量や離陸重量も重くなっています。横方向の大きさは主翼を折り畳むことで短く出来ますが、縦方向は胴体の設計を変更しない限り短くすることができず、スペースに限りのある空母での運用には不向きとなっています。

 

しかも、重量が重ければカタパルトで射出するために加わる力は大きくなり、その衝撃は機体とパイロットを襲うことになります。現在、カタパルトでの運用に最適化するため、全長を短くした派生型を開発中らしいですが、一体どれだけ小型化しているのかは不明です。

 

画像上:J-20/下:J-31

 

そして両機に共通する問題点として、開発中の国産エンジンが安定した性能を確保できるのかという点があります。J-20が搭載する国産エンジン「WS-5」も、J-31が搭載する国産エンジン「WS-13」も、技術的にも性能的にも一世代古いにもかかわらず、耐久性の問題で実用化に手間取っているようです。

 

もし、このエンジンを艦載機に搭載する場合、さらに塩害対策も講じなければならず、腐食性の高い素材の開発に苦戦するのは目に見えています。おそらく実用化できたというレベルのステルス戦闘機の艦載機化には、もう一〇年前後はかかるのではないでしょうか。

 

このように、カタパルト式を採用する003型以降の艦載機の候補はJ-20とJ-31の2種類が想定されていますが、どちらも艦載戦闘機としてはまだ問題があり、どちらが選定されるされるかはまだ決まっていない模様です。

 

〈まとめ〉

このように、中国海軍の国産2隻目である003型空母は遼寧・山東から大幅に進化し、通常動力×蒸気カタパルトになるとみられますが、艦載戦闘機についてはJ-20とJ-31両方に問題もあって選定は終わっていないという問題があります。

また、現在では電磁カタパルトと原子力機関の研究が進められているために、003がより後の国産空母は電磁カタパルト×原子力機関になる可能性が高いと思われます。

写真上:003型空母の想像図

下:J-15(殲15)

長くなってすいません…

個人的には中国海軍の8万トン級の原子力空母を見てみたいと思っていますが…いつになるのかは不明ですね…

 

〈参考・引用〉

・「軍事研究」2020年3月号

〈「電磁カタパルト採用説は真実か!規模・能力縮小か?中国空母「002型」〉/田中三郎/ジャパン・ミリタリー・レビュー/2020年3月1日

・「最強 世界の空母・艦載機図鑑」/坂本明/学研プラス/2017年9月6日以下インターネットより

・Wikipedia(コレ書くと笑われますが…)

・https://aviation-space-business.blogspot.com/2018/02/blog-post.html

・http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2018-08/02/content_57974148.htm

・https://trafficnews.jp/post/93015/3・https://dot.asahi.com/aera/2017011700211.html?page=2

・http://www.ssri-j.com/SSRC/abe/abe-92-20140128.pdf

・                                    http://tokyoexpress.info/2015/01/19/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E7%A9%BA%E6%AF%8D%E9%81%BC%E5%AF%A7%E3%80%81j-15%E6%88%A6%E9%97%98%E6%A9%9F%E3%82%92%E6%90%AD%E8%BC%89%E3%81%97%E8%A8%93%E7%B7%B4%E3%81%AB%E5%8A%B1%E3%82%80/

・http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2012-11/27/content_27239192_2.htm

・https://www.sankei.com/world/news/170220/wor1702200059-n1.html

・http://fuseishoyo-roku.cocolog-nifty.com/blog/2018/05/post-3c53.html

・https://grandfleet.info/military-trivia/china-has-two-obstacles-to-full-scale-carrier-operations/・https://www.excite.co.jp/news/article/Recordchina_20190421017/

・https://www.afpbb.com/articles/-/3224015

・http://www2.jiia.or.jp/pdf/research/H30_Indo_Pacific/03-ohara.pdf

・https://ameblo.jp/jtkh72tkr2co11tk317co/entry-12414033704.html

・http://blog.livedoor.jp/yamamoto561/archives/17203688.html

・http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2014-01/24/content_31297241_2.htm

・https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55469

・https://kaikokuheidan.com/315.html

・http://j.people.com.cn/n3/2019/1218/c94474-9641786.html

・https://www.businessinsider.jp/post-168290

・https://wedge.ismedia.jp/articles/-/18280


管理人あとがき:今回は干缶氏の作成した「003型空母」を元に、HP掲載上多少の公正を加えさせて戴き「寄稿」欄に掲載したものです。ご協力いただいた干缶氏には感謝の念以外の何物でもありません。有り難うございました。

他にも管理人に寄稿をしてみたい方はホームのお問い合わせの欄からどうぞ。